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成功事例と失敗事例から学ぶ、緊急時の情報発信のあるべき姿

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よくBCP/BCM関連の書籍で事例として引き合いに出されるのが、米国での同時多発テロによる金融機関の復旧事例、東日本大震災での復旧事例です。どちらのケースでも復旧に差をもたらした企業は、あらかじめBCPを策定しており、短時間に事業を再開させる動きについて外部に対して情報を発信し続けたことがあげられています。建物をはじめまわりのインフラ、生産設備の被害状況、従業員の健康状態、営業再開に関する情報をあらゆる手段を駆使して発信し続けた企業とそうでなかった企業について振り返ってみましょう。

東日本大震災における適切な情報発信事例

3.11のあと、6日目には営業情報を自社サイトに掲載

BCP・BCMの好事例として、いまや必ず紹介される事例がO社。地震発生の40日前に策定したBCPにおいて、中核事業(BCP策定時になにを最優先にするかを自社事業ドメインの中で決めること)を油水加工(再生処理の一部事業)としていたので、2011年3月17日の午後3時には「廃油処理でお困りの方がおりましたら、ご一報下さい」という第一報を自社サイトのトップページに掲載しました。O社の社屋から津波で流されたドラム缶や廃油の回収を急ぐとともに、被災したガソリンスタンドや工場から拡散したオイルの回収は、火災という二次災害の防止として、とても重要なことでした。自社サイトで復旧状況を従来のお客様をはじめ、地域の行政関係者や遠隔連携をしていた企業に伝えることができたことにより、次々とオイルの回収依頼、支援が届き、回収作業がすすみました。O社への評価は飛躍的に高まり、その後の業績に直結しました。

津波被害地域から歩いて山越え、インターネットに接続

三陸海岸のある町で経営コンサルティング業と損保代理店を営むA氏は、3月11日津波の被害で事務所を完全に失いました。しかし、自宅は宮城県内陸部の山間地域であったため、津波から命からがら逃げ込んだ避難所で、内陸部の被害状況を聞き、意を決して20kmを超える道のりを夜通し歩いて自宅に帰りました。停電復旧後、インターネットに接続し、集客営業手段として使っていたブログを更新、携帯電話も駆使して、営業を再開します。もともと自宅でも仕事をする機会があり、あらゆるデータをクラウドサーバーに預けていましたので、地震被害による損害保険の相談や申請にすばやく対応できたそうです。

通販サイトをショッピングカートシステム提供会社の担当者の判断で停止

かまぼこなどの練り製品は三陸海岸の銘品です。笹かまぼこをはじめとする練り製品を販売するサイトを運営していた会社と3月11日以降、まったく連絡がつかなくなったショッピングカートシステム提供会社の担当者は、「このまま通販サイトを稼働していたら、注文したお客様から商品が届かないというクレームにつながる恐れがある」として、自分の判断でショッピングカートを停止させました。
本来、BCPの中で被害程度に応じた行動計画が策定されていれば、担当者の個人的判断でこのような対応をすることはなかったはずですが、あいにく、通販サイト運営に関して、このような事態にどのような対応をするかの基準がありませんでした。今回は、たまたまテレビで見た津波の被害情報を冷静に判断したシステム提供会社の担当者が、商品の製造発送は当面無理に違いないと電話やメールで連絡を取り続けたのですが、まったく連絡が取れず、やむを得ず停止という判断をくだしました。結果として、その練り製品会社は、事務所も工場もひどく被災し、製品を生産し、出荷できるような状態にはなかったため、その判断は正しかったのですが、あのままショッピングカートが稼働していた場合、お客様からの期待を裏切り、ブランドの損失につながっていた可能性が否めません。

東日本大震災における情報発信の失敗事例

自治体サイト震災後更新されず

福島県のある自治体では、311以降、地震と津波、福島原発による放射能漏れによる混乱から、まったく公式サイトが機能せず、トップページは「現在災害は起こっていません」がしばらく続き、その町の出身者の方は、強い不安をいだいたという笑えない話もありました。自治体サイトについては、総務省からあるべき姿が推奨されていますが、財政力により、運営品質にはばらつきがあり、本来なら非常時にこそ、正確な情報発信源として機能すべきサイトがその機能を果たせなかったのです。

ソーシャルメディアの負の側面・・・噂やデマの流布

ソーシャルメディアでもたらされる噂話、デマ。それにかこつけて便乗し、必要以上に他者批判を繰り返すソーシャルメディアユーザー。このところ多くみられるソーシャルメディアの負の側面です。3.11東北大震災でも、なにが事実なのか判断できないことが流布されました。
噂話、デマによって、ブランドイメージを消失したり、落ち度がないにもかかわらず加害者になってしまったケースもありました。2012年3月11日、コスモ石油株式会社千葉製油所のLPガスタンクの爆発炎上事故では、多くのデマが流布されました。翌日、コスモ石油コーポレートコミュニケーション部 広報室から公式サイトに「千葉製油所関連のメールにご注意ください」という案内が記載され、沈静化がはかられましたが、ソーシャルメディアによるデマの連鎖はしばらく続き、良識あるユーザーの一部が公式サイトの案内を引用し、デマを否定し、デマを流布したユーザーをたしなめるという動きがありました。この場合、コスモ石油がいち早くデマに気付き、公式サイトに見解を記載することで極端な混乱は避けられましたが、URLや文章として引用できる体裁の情報がネット上になければ、混乱は長引いたと思われます。

また、このような問題は、鳥インフルエンザや宮崎口蹄疫問題でも起きました。宮崎口蹄疫問題では、農林水産省の対応が後手になったことから、牛農家の消毒薬配布の困窮を訴えるブログにより、事実を把握した東北の同業者が独自に消毒薬提供の支援を申し出るなどの動きもみられたこともありました。自分たちの事業を守るために、リアルタイムに事実を伝えていくことで、事態が打開することもあるのです。

成功事例と失敗事例から考える、緊急時の情報発信のあるべき姿

「今どうなっているか」は自分自身が発信するしかない

子供のころ、「伝言ゲーム」という遊びをやったことはありませんか?子供たちは7,8人ほどのグループごとに一列に並びます。ゲームの主催者が各列の先頭の人に対して、ある「話」を聞かせます。列に並んだ子供たちは次々と後ろを向き、後ろに並んでいる友達にその「話」を伝えていきます。まさに耳打ちして伝言していくのですが、列の最後にその話が伝わったときに、各グループごとにその「話」を発表し、元の「話」と発表された「話」の内容が一致するかどうか、またどの程度違って伝わったかを楽しむゲームです。やったことのある人は思い当たる節があると思いますが、かなり内容が異なっていきます。また、このゲームに限らず、噂話を聞いて、その話に登場する人物に直接話を聞きに行くと、まったく内容が違ったという経験は、だれにでもあるはずです。非常時の現況情報についてもまったく同様で、自社の被害状況を正確に伝えてくれる人はいないのです。

企業としてリアルタイムに正確な情報を発信する

ソーシャルメディアの普及により、簡便な方法で個人としてリアルタイムに情報発信ができる時代になったにも関わらず、企業として、正確な情報をリアルタイムに発信できる体制をつくっていないところが多いのが現状です。情報の出所として、地域において、本来社会的責任をもつべき企業が正確な情報を発信せず、個人が推測や感情的に判断したことを根拠に情報を提供することから見られる混乱は、決して望ましい状態ではありません。企業として、正確な情報を発信し続けることは、信頼を勝ち取り、業績に直結することなのです。経営者には、事業や従業員、地域にかかわる情報を正確に発信する義務があるのではないでしょうか?

生田 明子

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