サイト内検索
- 文字サイズ +
印刷範囲
全体プリント
本文プリント

復旧状況をどのように確認し、どのように伝えるか?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

dispatch_preparation

緊急事態が発生したときに初動を的確に行い、いち早く業務の再開と顧客対応を行うためには、被災状況や復旧状況を早期に正確に把握することが不可欠です。ここでは事業継続を脅かす事態に陥った場合に被災状況の把握と復旧作業を進めるうえでの確認・連絡を的確に行うためのポイントを解説します。

平常時から重要業務のランク付けをしておく

被災状況の把握と復旧作業を円滑に進めるうえために、平常時から「重要業務のランク付けをする(確認・普及すべき対象に優先順位をつけておく)」とことが大切です。緊急時は一分一秒を争うスピードで膨大な課題に対しての判断をしなければなりません。順番を間違えると、復旧の大きな遅れが生じてしまったり、2次災害が発生してしまったりすることもあります。そこで、企業存続のうえで特に重要な事業(中核事業)を中心に重点復旧要素を決めておき、緊急時は優先度順にあらかじめ決めておいた手段によって復旧作業を進めていきます。場合によってはあきらめなければならないことも出てくるため、まさしく事業継続のための「トリアージ」といってもよいかもしれません。

業務ランク付けを行う上での評価軸

業務ランク付けを行う上での評価軸としては、以下のようなものがあります。

  1. 収益/コストへ影響(供給や販売が止まってしまうことで発生してしまう売り上げやコストへの影響。違約金の発生可能性。)
  2.  顧客/取引先との関係への影響(クレームが発生し、他社へ乗り換えをされてしまう可能性)
  3.  評判/信用への影響(顧客、取引先、従業員、一般等からの企業に対する評価の低下や、信頼を失う可能性。)

一時的な売り上げの減少だけでなく、長い目で見た事業への影響を鑑みて、より優先的に守るべき業務を選ぶようにしましょう。

重要業務の事業継続に必要なリソース(確認すべき対象)は?

次に、重要業務の事業継続に必要なリソース(確認すべき対象)を洗い出します。例えば、以下のようなことが挙げられます。

  1.  顧客(安否確認、納品した製品・サービスの被災状況、納入前の場合は納品を受け入れてもらえる状況かどうか、など)
  2. 社員(安否確認、現在地、業務が遂行できる状況かどうか、など)
  3. 営業所(社屋・工場・営業所などの被災状況、電気・ガス・水道などが止まっているか、など)
  4. 協力会社(安否確認、社屋・設備などの被災状況、業務が遂行できる状況かどうか、納入に遅れが生じるかどうか、など)
  5.  サーバ(稼働しているかどうか、データが損失していないかどうか、損失している場合バックアップから復旧できそうかどうか、データの流出がしていないかどうか)
  6.  電話・メール(不通になっていないかどうか)
  7. Webサイト(アクセスできる状態になっているかどうか、データが損失していないかどうか、損失している場合バックアップから復旧できそうかどうか、更新可能な状態かどうか、など)

緊急時における状況確認や連絡手段を考える

確認すべき対象が洗い出せたら、次に確認手段や連絡先の管理方法を考えます。「連絡網が整備されておらず誰が、どのように確認できるかわからない」といった事態や、「システム担当のAさんしか確認できる人がいないが肝心のAさんと連絡がつかない」といった事態は避けねばなりません。災害時に立ち上げる対策本部の中に、「情報収集・プランニング」チームを設けて、複数名体制で確認作業や情報収集、連絡が行える体制を作りましょう。

また、サーバやWebシステムなどのID・パスワードの管理方法にも注意が必要です。「パスワードを知っている人が誰なのかよくわからない」、「どこに保管されているのかわからない」、「ID・パスワードがパソコンの中に記録してあるがそのパソコン自体が使えない」といった事態に陥らないよう、重要データへのアクセス方法についても体系的に整理しておきましょう。

また、被災レベルによって確認・復旧作業の対応方針が変わるケースも多いです。被災レベルに段階をつけて、「この場合はこのような方針で対応を行う」、「この命令はこのレベルに達したときに発動する」といったことも決めておきましょう。

確認・連絡手段を複層化する

確認すべき対象が明確になったら、次は、重要業務の被災状況の確認や復旧のための指示をどのような手段で行うかということです。平常時は当たり前のように使える電話は緊急事態となると使用できなくなるリスクもあります。特に固定電話や携帯電話は輻輳(ふくそう)して長時間つながらなくなってしまうことも想定されるため、「これがダメだったときはこちらを使う」といったように二次手段・三次手段を用意しておくことが重要です。サーベイリサーチセンターの調査「東日本大震災に関する調査(帰宅困難)」によれば、東日本大震災の際に安否確認で利用したもののうち、固定電話・携帯電話・携帯電話のメールの利用率が特に高かったが、これらはつながりにくく利用できない状況も多かったと報告されています。電話だけに頼らずに補助となるコミュニケーション手段を用意しておきましょう。

電話を補うコミュニケーションツールとしてソーシャルメディアを活用する

では、電話を補うコミュニケーションツールとして何が有効でしょうか?東日本大震災で新たな確認・連絡手段として注目を浴びたのがソーシャルメディアでした。NECビッグローブ社の調査「東日本大震災におけるツイッターの利用状況について」では、Twitterの「1日の平均ツイート数約1800万件に対し、震災当日の3月11日は、約3300万件とツイート件数が1.8倍に増加。震災後1週間は2500万件以上の日が続き、以降も平均ツイート数が2200万件を超えているなど、震災前と比較して20%以上増加した」との報告もされています。

さらに、Google社が震災直後から立ち上げた安否確認用サイト「Google Person Finder」など、Webサービス運営会社が独自にサービス提供している代替手段も増えてきています。認知度や利用率についてはまだこれからではありますが、「Google Person Finder」は震災後3週間の訪問者数が300万人を超えるなど、こういったサービスの利用率は高くなってきています。

ソーシャルメディアや各種Webサービスについては、情報の取り扱いに配慮して利用すれば、ビジネス上の連絡手段としても有用性が高いと言えます。ただし、より安全に情報管理できるツールを導入したいという場合は、セールスフォースやサイボウズなど企業活動用に開発された商用クラウドサービスの導入も検討するとよいでしょう。

また、非常時は停電や事務所の被災、出社困難などにより、デスクトップパソコン等の機器が使用できなくなってしまうことも想定されます。手元にある携帯電話やノートパソコンといったモバイル端末でもこういったツールへのアクセスができる仕組みを作っておくことや、停電になってもこれらの機器が使えるように非常用電源設備を用意しておくなど、最低限の情報の収集や発信ができる情報孤立にならないような仕組みづくりも大切です。

社外向けの情報発信

ここまでは、社内コミュニケーション手段に関することを中心に述べてきましたが、もうひとつ重要なことは、対外的に自分たちの被災状況や業務遂行状況・復旧状況や復旧計画などを発信していくことです。対外向けの正確な情報発信ができないと、取引先の状況をつかめずに不安を感じたり、他社に乗り換えるなどの事態に陥ったり、混乱に拍車をかけ2次的なトラブルが発生してしまうリスクがあります。そのような事態を防ぐためにも、緊急時でも対外的な情報発信ができる手段を確保し、適切に情報発信するための手順や承認フローを整備しておくことが求められます。

この場合も、電話やメールだけでは不十分な可能性もあるため、公式WebサイトやTwitter、Facebookといったソーシャルメディアの活用も視野に入れるとよいでしょう。

緊急時のコミュニケーションにおけるIT活用術

最後に、緊急時のコミュニケーションにおいて、便利なIT技術やサービスについて詳しく紹介します。

「Webメール」でいつでも、どこでもメール送受信を可能にする

停電や事務所の被災、出社困難などにより、デスクトップパソコンが使えない状況では、パソコンで開くメールソフトでは緊急時に使用できなくなってしまうリスクがあります。
そのような事態を防ぐことができるのがWebメールです。Webメールであれば、インターネットにつながっている状況であれば複数の環境でも、特定のURLにアクセスしてID・パスワードを入力すればメールの確認や送信ができるようになります。もちろん、携帯電話やスマートフォンでも使用できます。

さらに、「Google Apps for Business」というサービスを導入すれば、自社独自のメールアカウントとGmailを連携させ、独自メールアドレスでのメールの送受信が可能になります。以前より大手企業の導入も進んでおり、東日本大震災を契機にさらに導入が加速しています。

IP電話の導入~輻輳の防止~

緊急時には電話回線が輻輳してしまい、電話がつながりにくい状態が続いてしまいますが、一般回線に比べてIP電話のほうがつながりにくい状況が発生してしまうこと少なかったという報告もされています。これには、まだIP電話の利用者数が少ないという事情もありますが、中継交換機を介して電話をつなげる一般の電話回線に対し、網目状に張り巡らされたインターネット回線を利用して電話をつなげるIP電話の仕組みが服装の防止に貢献していると考えられます。

Skypeの利用

Skypeとは、マイクロソフト社が提供する、どのプロバイダでも利用できるインターネット電話(IP電話)サービスです。Skypeには、音声によるコミュニケーションだけではなく、文字ベースの会話をおこなうチャット機能、ビデオチャットといういわゆるテレビ電話のような機能、操作しているPC画面をチャットしている相手も閲覧できる機能などがあります。これらの機能は1対1ではなく、N対Nで利用できるため、複数の遠隔地にいる者を同時につなぐ会議に利用することも可能です。

ソーシャルメディアの利用

先述のように、TwitterやFacebookも緊急時の連絡手段として有効です。東日本大震災の直後も、電話やメールが使えない中、安否確認や情報の収集・発信としてソーシャルメディアが有効に機能したという事例が多数報告されています。実際筆者の周りでも、電話・メールが通じない中、Facebookで安否情報が初めて確認できたという方が実際に何人か存在しました。

IMJモバイル社の調査「震災に伴う Twitter、Facebook 利用実態に関する調査(PDF)」では東日本大震災の地震発生後72時間以内の利用者のうち利用内容としてTwitterユーザーの83.5%が情報の収集に利用したと回答し、Facebookユーザーの56.0%が友人・知人の状況確認に利用したと回答したとの報告がされています。

一言でソーシャルメディアといっても、媒体によって利用のされ方も異なるため、媒体の特徴に合わせた活用方法を検討できるとより良いでしょう。

CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を導入する

自社サイトの更新運営を制作会社や詳しい特定の社員に任せっきりにしていると、いざという時に彼らと連絡がつかずに、緊急情報が更新ができなくなってしまう事態に陥ってしまいます。その解決策としてCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)の導入があります。CMSとは、HTMLの知識がなくてもWebサイトの更新ができるようにするためのWebサイト作成・編集システムの総称です。日本国内でも数百を超える数のCMSが利用されており、無料のものから、数千万円規模のものまであります。多くのCMSはWebブラウザ上で更新作業を行えるため、CMSを導入すれば、制作会社やHTMLに詳しい特定のスタッフに依存しなくても、公式Webサイトの更新ができるようになります。

⇒CMS導入についての詳細はこちら

TV会議システムの利用

事業所が複数にまたがる企業の場合、緊急時には一つの場所に集合して会議をすることが難しく、遠隔地から状況の確認や指示を出さなければいけないケースも出てくることがあります。しかし、電話やメールだけでは「危機感の共有」も含めて正確な情報共有ができず、判断を誤ってしまうリスクもあります。そのような事態を回避するためにはTV会議システムが有効です。実際に、東日本大震災の際にも、TV会議システムを利用して被災状況を伝えることで被災を免れた事業所とも連携した復旧作業を実現したり、被災を免れた事業所から被災した事業所に向けて応援のメッセージやサポート状況を直接伝えることでモチベーションを維持して早期の復旧を実現で来たという事例も多数報告されました。TV会議システムは一昔前までは非常に高額で大手企業しか導入できないようなものでしたが、ASPサービスとして安価に提供されるものも増えてきておりますので、中小企業でも十分検討できるレベルにまで来ています。

サーバや業務システムのクラウド化・データのバックアップ

事業の継続や早期の復旧作業を妨げるリスクのひとつに、サーバのダウンやデータの損失があります。また、被災状況が激しいとしばらく事業所があるエリアでの業務ができず、遠隔地に避難しなければいけない事態も想定されます。そのような状況下でも事業継続のための復旧を早めるためには、サーバや業務システムをクラウド化しておき、特定の場所や機器でなくても利用できる運用体制を構築しておく必要があります。サーバに関しては、安価なレンタルサーバでもクラウド化を強化しているサービスが選ばれるケースが増えてきていますし、独自にサーバを管理するのではなく、よりセキュリティレベルやバックアップ体制が強固なデータセンターへサーバを預けるケースも増えています。顧客管理やプロジェクト管理を行う業務システムについても、セールスフォースやサイボウズなどのクラウドサービスの導入を検討する企業が増えてきています。

こういったサーバやシステムのクラウド化に加え、万が一のデータ損失に備えて、データは2重、3重にバックアップをとっておくことが望ましいです。さらに、すべてのバックアップデータの同時被災を防ぐためには、広域でデータのバックアップができる仕組みも検討が必要です。

⇒クラウド化、データバックアップについての詳細はこちら


「いざというとき」のために押さえておきたい用語解説
  • 輻輳
    電話交換機の処理能力を超えるような、呼び出しや通話が殺到してしまうことで、呼び出しや通話に規制がかかること
  • Webメール
    ウェブブラウザを通じてアクセスして利用する電子メールサービス
  • Google Apps
    Googleが提供している独自ドメインでいくつかのGoogle製品を使えるようにするサービスで、Gmail、Googleカレンダー、Googleドキュメントやサイトといったアプリケーションが含まれる。
  • ASPサービス
    インターネットを通じて顧客にビジネス用アプリケーションの使用権を貸与するサービス。
  • CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)
    HTMLの知識が少なくてもWebサイトの更新運営をスピーディに低コストで実現できるようにするためのWebサイト作成・編集システムの総称。
  • クラウド
    データを自分のパソコンや携帯電話、特定の機器ではなく、ネットワーク(インターネット)上に保存する使い方、サービス。

谷川 雄亮

お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせフォーム
ページの先頭へ